ivy

[路端のブランチ]vol.13 名古屋といえば……台湾!?

Column

地元でオススメの旨いもの教えて!

こう聞いて、観光ガイドに載るような”名物”を教えてくる人はあまりいない。少なくとも、私の周りには。

逆に教えてくれるのは、学生時代通った定食、近所の中華、ライブ終わりに行くカレー屋、デートで行くビストロ……うんそれ。そういうことだよ。さっすが、よくわかってらっしゃる。

さて、そんな会話で必ず挙がる食べ物は何か。もう間違いなく出てくるんだ。

それは、ラーメン。やっぱりみんな好きなのかなあ。

そうそう、この間知人を訪ねて名古屋に行ったんだけど、名古屋在住歴がある友人に同じ質問をしたら「台湾ラーメンは絶対、食べて欲しい」というパワープッシュ。台湾風のラーメン……うーん。

しっくりこないっ!

行きはその正体が気になり、ひたすらモヤモヤ。しっくりきたいので、着いたら早速向かった。飲み屋街、今池にある年季の入った店。行くなら本店に行け、とはその友人談。こういうご当地偏愛系フードって、例に漏れず、特定の街で人気店がローカルチェーン展開していること。チェーンじゃなくて、暖簾分けで、味は店舗によって違うパターンもある。ちなみに台湾ラーメンの人気店は暖簾分けみたい。

着いたらもう、店内がハードコア。剥き出しのメタル製テーブルに蛍光灯。やたらと眩しい。凡そ飲食店とは思えないインテリア。モクモクと上がる煙から唐辛子と香辛料、食欲をそそる薫りが立ち上る。

お決まりのように注文して到着したのは、赤いスープと挽肉たっぷりの麺。例えるなら、アレかな。大学があった、吉祥寺駅そばのラブホ街にある中華屋、朝11時から翌日朝8時までやってるあそこのサービスランチラーメンに似てる!……わかる人、いない?

まあ、それはよしとして、肝心なのは、味。適度にジャンクでどこか落ちつく、どこかで食べたような懐かしさがある。ただし、決してありきたりな味ではない。これがきっと、クセになる。勿論、旨いんだけど、飛び上がる圧倒的なタイプの旨さとは違う。定期的に食べて、これだよこれ、って言いたくなる味。

衝撃的な旨さ、って毎日・毎週は食べられないけど、この手の旨さは本当にハイペースでリピートしたくなる。

後から追いかけてくるキレのある辛さも、ギリギリの塩梅で誰でも楽しめる具合だ。マイルドとまではいかないまでも、優しさを感じる辛さ。

パンチがある、エッジが効いた味でも、どこか優しい。毎日食べたくなる。そういう食べ物こそ、地元民が教えてくれる、ソウルフードの共通項かもしれない。その地域の生活と共にある食べ物だから、寄り添って味が完成される。

教えてくれた人は私より少し年上だけど、地元でこのラーメンをがっついている在りし日の姿を思 い浮かべながら店を出た。

[路端のブランチ 序文]

 日曜日、時計を外す。
 そろそろ昼飯を食っておこうとか、もう帰ろう、とか考えることすら億劫だ。あまりに遅刻癖が治らないから、仕方なく間に合わせのチープカシオを平日だけつけるけれど、基本的には時計を見られない。類は友を呼ぶというが、周りもそんな輩が不思議に多い。
 そういう奴らと遊んだり、野暮用を済ませたりすると、自ずと昼飯はグダラグダリとしてしまう。開店前に並ばなきゃいけない飯屋に休みの日を使ってわざわざ行くなんて、僕らの頭には浮かばない。
 時間を気にせず、その時いた場所でサクッと食うメシが一番だ。   ivy