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野田大介さん(会社員)

福岡は全国でも飲食店が多く、コーヒーショップも例外ではありません。それは同時に多くのコーヒーラバーが住む街とも言えます。

コーヒーとカルチャーが融合したイベントやお店も多いことも特徴的です。

野田大介さんは、そんな福岡在住コーヒーラバーの一人。彼を初めて知ったのはインスタグラム。コーヒー屋さんでのひとときや、美味しそうな食事まで、彼の写真は温かみがあり、惹きつけられました。実際に知り合い、お話をしてみても写真で表現されるような、柔らかで温かい雰囲気を纏う真面目な青年でした。

実は、彼は暮らしへのこだわりや考え方が面白く、とても気になる存在でもありました。

この度インタビューが実現し野田邸にお邪魔させていただき、彼の暮らしを覗かせてもらいました。

インタビュー:Nana Hiro

写真:中村圭甫

料理と写真。

そこから生まれる人とのつながりと暮らし。

—いれていただいたコーヒーをいただきます。どんなコーヒー豆が好きですか?

季節で好みがころころ変わるんですが、寒くなってきたら深い焙煎の豆を好みますし、夏は酸が際立つものが好きになります。

偏らずにいろいろ楽しめる方です。ブレンドよりはシングルが好きですかね。

ーコーヒーの器具はどれくらい持っていますか?

V60カリタウェーブ、エアロプレスを持っています。

今日は深煎りの豆だったのでネルドリップでいれました。

—コーヒー好きになったきっかけはなんでしょう?

BASKING COFFEE※が最初のきっかけでした。

もともとまったく飲めませんでした。苦いのもだめだし、浅煎りの酸もだめ。大学1,2年生頃に初めて行きました。

もともとお酒が好きでワインをよく飲んでいたんです。

ワインの紹介のようで興味を持ったのがきっかけで好きになりました。コーヒーのフレーバーの説明が面白いと感じましたね。

—もともと食べるのが好きなんですか?

そうですね。

幼馴染の影響が大きかったですね。

食べるのが好きな人でよく食べ歩きをしていたんです。洋食、特にイタリアンなど好んで行きましたね。

それがきっかけでイタリアンのお店で3年間ほどアルバイトをしました。

そこでピザの生地作りも覚えました。

アルバイトはサーブする側、接客メインでしたがホールからキッチンが見えるような小さなお店だったので目の前で見ているうちに作ることにも興味を持ちました。できそうだなあ、と思っていざ自分でやってみたら同じようにはいかなくて。

それから「作ること」にはまっていきましたね。

—得意料理は?

最近はパイ料理にはまっています。

ミートソース作ってハーブバターと一緒に包んで焼いてみたり。

—以前おすそ分けしてもらったガレットデロワ、アップルパイ美味しかったです。

ありがとうございます。

料理の会を開いて自宅に友人を招くこともあります。

※BASKING COFFEE…インタビューFile4「コーヒーをつくるひと」で掲載。福岡市のスペシャルティコーヒー専門店。

—ワインの瓶もたくさんありますが、これらは自分で開けたもの?

そうです。供養しきれなかった、空ビンがまだベランダにあります。

一人で飲んだり、友人を呼んで飲んだり。月に4、5本空きますね…

あとは、ウイスキーなどゆっくりたしなめるものを飲みます。

基本的に僕が和食を作れないので洋食に合うお酒になる。

—知識を得てきて自分のものにするのってすごいですよね。アルバイト先で料理覚えてくるというのも。

働いているという感覚がなくて遊びに行って好きなことを教えてもらっているという感覚でいたので、覚えられることが楽しかったですね。

—野田くんと言えば、もうひとつ。「写真」について聞きたいです。写真はいつから始めたんですか?

大学2、3年生頃からでした。

旅行に行くときにカメラを買って初めてそこから撮り始めました。

撮るものは主に食べるもの。食べることが好きだったから食べ歩きのたびに写真を撮っていたら今の感じになりました。

—確かに食べ物の写真が多い。でも人物写真も撮っていますよね。

はい。ですが実は結局、料理をつくる人やコーヒーをいれる人を撮っているんですよね。食べ物から離れていないんですよ。

野田くんの写真
野田くんの写真

へえ!全くぶれていない!食にまつわることなんですね。

好きなんですよね。そればかり撮っている。

—独学で写真の勉強をしたんですか?

はい。

今はインスタやツイッターなどのSNSで写真を撮るのがうまい人たちがたくさん写真を載せてくれているので参考になるものが多く、そういったものを探して見てやってみたりしています。

—福岡ではコーヒー屋さんを撮る人が多いなあと思うのですが。そこからつながって写真展をコーヒー屋さんで開催されていたりしましたよね。そういったつながりはどうやって生まれてくるのですか?

コーヒー屋さんでお客さん同士として知り合ったり、イベントで知り合ったり。自分がアルバイトで働いていたお店にお客さんとして来られた方がインスタを通して自分を知っていてもらって声をかけてもらったりもしましたね。以前行った写真展はその方から展示に興味ありますかと、お誘いがあり参加することになりました。

—趣味があうと世代は関係ないと感じますか?

どちらかというと同世代の友人の方が少ないと思います。年上の方が多いですね。

—福岡という土地は野田くんの好きな「食」が豊かだなと感じますが、野田くんにとって良さはどの部分に感じますか?

素敵なお店が多いことだと思います。

お店の人がお客さんを巻き込もうとしてくれることが多いと感じますね。

基本的に僕は人見知りなんです。こちらから話しかけられないけど相手から話かけてくれて仲良くなるということが多い。それが容易にできる街だと思います。

—意外ですね!こういった関わりや広がりから克服してきているのではないですか?

飲食店で働いたことで克服したのかなあ。

お店の方からもプライベートで誘ってもらって友人関係になっていくとか、そうしたことでも広がりましたね。

—福岡を出たいと思わない?

はい!福岡から出ないように就職活動もしました。

好きなことにはとことん時間をかけて作り上げていく

—今のお部屋はどのように見つけたのですか?

今の部屋は住んで半年くらいになります。

バイト先でお世話になっていた不動産に頼み一件目に紹介されて決まりました。

晴れの日は日差しがとてもよく入るんです。

家具でパーテーションを作りたかったからただの四角い部屋が理想的でちょうど良かったです。

—お部屋作りのイメージやテーマはありますか?

この2週間くらいでイメージが固まってきたんです。それまではいろいろ悩んでいました。家具の配置も今と全然違っていたりして。

家具に関しては一人暮らししたらここで絶対買おうと決めているお店があって。

ほぼ毎週のように足しげく通っていました。

主にアンティークを取り扱うお店なので一点ものが多く、売れてしまうと商品が入れ替わる。売れたら新しいものが入るのでその都度で見に行っていました。

今はコロナ渦でなかなか外食や旅行に行けない分、家の中を充実させようと思って時間もお金もかけています。

最近は古いものが好きで古いものと新しいものをバランスよく入れたいなと思っています。

—新しいもの?

はい、これなんか一見アンティークに見えるんですけど作家さんの「下書き」みたいなものなんですよ。

釘の打ち方を簡易にしていたり線のあとが残っていたり、カットされすぎていたり…

—見つけてくるのも出会いですね。家具作りもしていましたよね。彫刻刀を使って。

はい、以前ランプシェードを作り友人にプレゼントしました。

今は、キャンドル立てが欲しいなと思っています。

基本的にこの部屋が暗いのでアルコールランプなどがあるんですけどそういうものの一個に欲しいなと。

—他には何か作りたいですか?

大きめの家具を作ってみたいですね。あと器なんかも。

洋食器が好きなので深めの大きなものを。

家具については最近いろんな人が僕の家で遊ぼうと言ってくれるのですが椅子が2脚しかなくて座る場所がないので大きめのベンチが欲しいな。

行きつけのお店で作り方はなんとなく聞いてはいるんです。

野田くんのプリン。

—休みは主に何をしていますか?

ずっと動きまわっています。

基本的にじっとできないタイプで人と会っている方が好きです。

どこに行くにも歩いて移動するようにしています。

毎週1時間半くらいかけて歩いてお店に行っている。

学生の時は1時間20分くらいかけてバイト先まで行っていました。

500円の移動費をコーヒー一杯と換算してしまうんです。

—好きなものには惜しみなく使いたい?

はい。

そして、お店でしかコーヒーだけで飲まないんですよね。

家だとコーヒーとおやつ。

料理と合わせる、ペアリングを意識するところがワインと似ていると思います。

(野田プリン登場。)

—すごい!カフェで出てくるものみたい!本格的ですね。

何度も作っているのですが、実は今回が一番よく焼きあがりました!

—どうしておやつ作りを?

もともと料理以外にもおやつ作りに興味がありました。

実家で暮らしているとき、やってみたくてもできなかったんです。

うちは4人兄弟で僕が長男なんですが、人数が多いと好きで集めた器も誤って割られてしまったりとか。

一人暮らしをしたらやってみようと思って。うずうずしていたんです。

やってみたら周りの友人が寄ってきてくれる。食べてもらえると楽しいんですよね。

—もてなすことが好きなんですね。

そのために一人暮らし始めたようなものですね。笑

—趣味と仕事と分かれていますが、これらを仕事にしたいとは思いますか?

はい、思っています。

ゆくゆくは自分の空間を持ちたいです。

それがお店としてなのか自分の部屋で満足することなのか自分の中ではっきりしていないのでやりたいことが見つかるまでは今のようにいろいろやってみようかなと思っています。

なので、土日を活かして好きなことをやりたいなと思っています。好きな分野のお店で働きたいかな。

好きなことだと働いているという感じにならないから動いてること自体楽しいので!

まるでカフェやアトリエのようなお部屋でとてもくつろいでしまいました。

出していただいたプリンもコーヒーも美味しい。空間も野田くんのもてなしもとても心地よい。全てに一体感があり、野田くんの良さがとてもわかる空間でした。

彼が話していたように、彼自身の大好きが詰まったおもてなしの空間が生まれることを願ってやみません。

Daisuke noda

Instagramアカウント:daisukenodananoda