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FRESCO COFFEE ROASTERS

今回取材をしたのは阿佐ヶ谷FRESCO COFFEE ROASTERS(フレスココーヒーロスターズ)さんの澤地さん。昔から名前をよく聞くお店で、時々個人的に訪れて美味しいコーヒーをいただいていました。その味はいつも安定していて、特にエスプレッソドリンク(カフェラテなど)が美味しい印象がありました。

フレスコさんが阿佐ヶ谷で開業したのが2003年。2009年から焙煎機を導入して自家焙煎店となりました。開業から20年となる今、澤地さんが考えるコーヒーのお話をお聞きしたいと思いました。

インタビュー:しば田ゆき

スペシャルティコーヒーがメジャーではなかった時代からスペシャルティコーヒーを扱っていたお店が焙煎を始めるにいたるまで

ー今日はどうぞよろしくお願いいたします。

早速ですが開業の時のお話を聞かせてください。2003年に開業なので、もう20年前のお話になりますね。どのような流れで開業に至ったんですか?

お店を開く前は会社員を10年くらいしていました。

もともと両親が商売をしていたので、やっぱり自分でなにかやりたいなってずっと思っていたんです。その頃はスターバックスとかが日本に入ってきて※1、エスプレッソがゆるゆると世の中に出始めている頃でした。それでエスプレッソおもしろそうだなって思ったんです。

当時、JBC※2を見にいったんですよ。第二回目か第三回目くらいだったんですけど、「これ勝てるんじゃない?」って思ったんです。

※1.スターバックスとかが日本に入ってきて:スターバックス日本一号店が1996年、タリーズコーヒー日本一号店は1997年にオープンし、シアトル系のエスプレッソを使用したコーヒードリンクが話題となった。

※2.JBC: Japan Barista Championship: 日本スペシャルティコーヒー協会主催のエスプレッソを抽出するバリスタの競技会。

ーそうだったんですね。年に一度開催されるJBCも今では19回大会くらいになっていますね。初期の頃のJBCってどのような雰囲気だったんですか?

今のJBCはもう完全に競技ですけど、昔はもうちょっとゆるい感じでした。レギュレーションもどんどん変わってきていますね。競技の中で新たなことをやる人が出ると審査の段階で「あれはどうなんだ」と精査する、という時代でした。自分のミルを持ち込んだ※3のも、僕ともう一人だけで、あとは全員貸し出しのミルを使ってました。本当にローカルな時代だったんですけど、競技は出場していておもしろかったですね。

※3:ミルを持ち込んだ:ミルはコーヒー豆を細かく粉砕する機械のこと。JBCでは貸与される機械の代わりに機械の持ち込みをすることが可能。現在は持ち込みをする競技者がほとんどである。

開業前、「エスプレッソ楽しそうだな」と思っていたのですが、まったくわからないので始めるにあたっていくつかのカフェでエスプレッソを飲んでみました。その中でビバーチェ※4の豆がおいしいなと思ったんですよ。マキネスティコーヒー※5の社長さんと話して、その豆を仕入れさせてもらうことになりました。

※4.ビバーチェ:シアトルのコーヒーショップ

※5.マキネスティコーヒー:東京都墨田区にあるコーヒー屋さん。

ー開業当初はコーヒーの焙煎豆を仕入れていたんですね。当時はまだご自身で焙煎はしていないということですね。

してないですね。

当時マルゾッコ※6もマキネスティさんが代理店で、うちに来たマルゾッコも、日本で7台目とかそういう時代でした。それでビバーチェの豆をつかって商売を始めました。でもやっぱり競技会(JBC)っていうのは僕の頭の中にあって、この豆ではいろんな制約があって使えないかなと思い、それでスペシャルティコーヒーを扱っているロースターさんから豆を仕入れるようになりました。それで何年かやったんですよ。

ただ、最初から焙煎はいつか自分でやろうと思っていました。

※6.マルゾッコ:イタリア製エスプレッソマシンのブランド名。

ーどうしてですか?

やっぱり焙煎で自分の好きな味を作ってお客さんに出したいなっていうのがずっとあったからです。ただ、自分のレベル的に最初から焙煎をやるのはハードル高いかなっていうのがあったので、まずは自分が出したい味みたいなものがあるていど明確になるまで色んなコーヒーを飲んで抽出して明確にしたいというのがありました。

それで次第にだいたいこんな味が好みだなっていうのがわかってきた。

ーそうなんですね。

「大体みなさんが生きてきた常識の中で、すべてのことができますよ」
自分の感覚を頼りにここまでやってきた澤地さんの想い

ー澤地さんはコーヒーの勉強ってどのようにしたのですか?

その頃バイブルみたいなものはほとんどなかったので、今もそうですけど全部自分で検証しながらです。エスプレッソも焙煎も。

ーエスプレッソも焙煎もなんですね。

2009年から焙煎機を導入して自家焙煎に切り替えましたね。
2003年に創業した最初の内は全然食べられなかったんです。

エスプレッソマシンと飲み物のメニューしかなくて、今で言う”コーヒースタンド”みたいなお店でした。スイーツも出していないガチンコのコーヒースタンド。

場所も場所だしお客さん来ないんですよ。「こりゃやばいな」と思って、どんどんスイーツを出して、フードを出して、ごはんも出してランチをやって…みたいな感じで売上げを上げていくことに専念しました。営業時間も朝7:30からやっていた時もありますし、最初の頃は休みも2週間に一度しかなかったです。

それまでカフェで働いたこともないし、コーヒーも飲んだことないじゃないですか。全部自分の実体験でなにが正しいのかっていうのをやってきてるので、結構むだな苦労をしています。

ーたしかに近道ではなさそう…。なぜそんなやり方をとったんですか?

会社を辞めて、なにをやろうかって考えながら1年以上遊んじゃったんですよ。全然決まらないまま。31歳になっていたので、どこかで習うっていうのはないかなって思いました。興味をもったエスプレッソもどこかで習うっていうのもなかったし、自分でやるしかないっていうのがありましたね。

当初食べられない時期もあったので売上を増やしていったんですけど、週末の来客数が半端ないことになったんです。1時間しかないランチの時間が戦争みたいになってしまって、「なんか嫌だな」となりました。コーヒーをやりたかったのに、これではコーヒー屋さんじゃないので、「これ以上無理だな」と思ってランチやフードをある時スパンとやめたんですよ。今やめないと変えられないと思って。そしたらまた食えなくなりました。笑 

ー笑。

店構えは変わらないけど内容は変っているので。コーヒー豆なんか売れないじゃないですか。

今までランチとかスイーツを目指して来てくれてた人は、そんなに満足いかないのでお客さんも減って。それは2回目の起業みたいなもんでしたよね。そこからまた苦労が始まったんです。

でもやるしかないので、今度はエスプレッソではなく焙煎の検証の日々。

ー自分で焙煎して自分で飲んで、自分で考えて、の繰り返しですか?

そうですね。その時は自分の目指す味があるので、そこに行けばいいだけでした。

ー当時、焙煎を教えてくれるお店などがいくつかあったと思うのですが、そういうところに行こうとは思わなかったんですか?

それも全然考えなかったですね。理由はわからないですけど…性格ですかね?

人に教えてもらうのも、全然悪いことじゃないです。でも最初に誰に教わるかでその先が変わっちゃいますよね。「誰に教わるか」ってすごく重要で、当時の僕にはそれを選択する時間も余裕もなかったです。

ただ、結局やるのは「コーヒー」じゃないですか。「焙煎」だし。

僕はコーヒー教室の講師をする時によく言うんですけど、大体みなさんが生きてきた常識の中で、すべてのことができますよ。無駄な情報みたいなものが入ってくるから、みんな難しくなっていくんです。「世の中の情報を信じないでください」と言っています。

もし情報を信じるなら「なぜか」ということを説明している情報を信じてください。僕は今日この講習会をやりますが、全部「なぜか」という理由を説明します。それで納得したらその作業を取り入れてください。納得しなかったら質問してください。自分がこの先にいろんな情報を耳にしたり目にしたりすることがあると思いますけど、理由が分からなかったら取り入れないでください。物事にはすべて理由があります。なぜこれをやるのかという理由がないものは、やる必要がないです。

エスプレッソも焙煎もそういう観点でやっているので誰かに教わらなくても必ず辿り着くと思います。だから本とかも読まないです。

ーおもしろいです。

わからないこともうまくいかないこともいっぱいありますけど、それも自分の「引き出し」ですよね。

ー本も読まず、教室にも行かず、自分でとにかく検証して試せばできるというスタイルだけでやっている方はわたしも初めてお話するかもしれません…。

できているかどうかもわからないですし、辿り着いているかもわからないですけど、答えが明確にないと到達点ってわからないので、コーヒーならまず自分がどういう味が作りたいのか確実に分かっていること。やってみてもしそれと違ったら、アクション・プロセスを変えていく。それで近づいていくじゃないですか。昨日よりは今日の方が近づいて、今日よりは明日の方が近づいて、いつか辿り着く。

ただ、足下すくわれることもあります。生豆のクオリティが変わったりとか、同じ農園なのに去年と違うとか、季節が変わったとか焙煎機が変わったとか、色々あるわけです。それを、今までの自分の経験をひっぱり出してきて自分のゴール地点に近づけるようにやってかないといけないんですよ。日々格闘していますね。

ー自分のこたえとの格闘みたいな…。

常に大丈夫かなって思ってます。コーヒーって焼いて飲んでも、時間が経っていかないと点数がわからないんですよ。「○日後が一番おいしい」っていうのをいつにするかも焙煎のフィニッシュの温度でも変わってくるんですよね。そういうのも難しいなって思いながら日々やってます。

「みんな自分の舌を信じてほしい」「人間の感覚を大事にしてほしい」「ものは使いようだ」
そう言って目の前にあるものを感じて考えることの大切さ

ー澤地さんが目指している味って、ことばにするとするとどんな感じですか?

ボディバランスはまるくて、甘味があって、酸味が味わいの中に入っている。その豆のキャラクターがどの豆を飲んでもしっかりわかる。

ひとつそういう基準はあるのですが、最近はより浅くしてそのバランスを超えている部分を出していかないとなというのもあります。

うちのベースにある味わいを僕なりにずっと作ってきてるので、そこから逸脱するとお客さんが「うちっぽくない」と思うと思うんですよ。でも同じものばかりもよくないし、違う味わいの楽しみもありますよね。うちに来るお客さんの要望も「深いのください」「酸味のないのください」「酸味があるのください」とバリエーションが多いので、僕らしさの中にない部分にも挑戦して幅をつけていかなきゃいけないのかなと思って色々やっています。

ー長く商売をやると難しそうな部分ですよね。すでについてくれてるお客さんの予想や期待を逸脱せずに新しいことをやるって大変なんだろうなと思います。

最近コーヒーには浅煎りブームとも呼べるトレンドがありますよね。そういうことに影響は受けますか?

とてもひっぱられますよ。そういう人たちも来るので、寄せていかなきゃいけないっていうのもあります。

でも僕の基準があって、浅いものを提供するとしたら同時に深いのも欲する人も必ずいらっしゃるので、うちの焙煎具合から少し浅くしてすっごい美味しいのがあったら、感動じゃないですか。浅くても浅さの具合って店によって違う※7し、うちが浅煎りを作るとこんな感じになりますよっていうのをうちなりの雰囲気でこれをベースにしたものを作っていければいいかなって。

最近の傾向がなければそういう風にしようかなってならなかったかもしれない。良いとか悪いとかじゃなくて世の中は変わるし、味覚ってその人のものだから。この焙煎度合いがおいしいって人がいるなら、僕が考えたここ(浅煎り)の部分を作るとお店の幅にもなりますし、もっとお客さんにも満足してもらえるかなと思うので。

※7.浅さの具合って店によって違う:焙煎度合いには定義された色合いがないので、「浅煎り」「深煎り」などの言葉はその店の任意で決められています。

ーちょっとほっとしました。頑なな方かと思ってました…。

全然ですよ。頑固職人親父みたいなのではないです。笑

ー創業当初にスペシャルティにしたと聞きましたが、なぜその時代からスペシャルティが良いと思ったのでしょうか?まだ今のようにスペシャルティがスタンダードではなかったように思います。

僕がスペシャルティを選んだ理由は、純粋に食材のひとつとしてどこの誰が作っているという情報が欲しかったからです。

ーそれは、焙煎のためにどんな豆なのかをとらえるのに必要ということですか?

焙煎するに当たってとかそんな大層なことではなくて、普通にどこの誰さんが作った豆ですよっていうのを知りたいというだけですね。最低限誰が作りました、精製方法※8はウォッシュト※8です、ナチュラル※8ですくらいの感じです。得体の知れないものを焼いたり飲むのは抵抗あって、そうやって情報が分かるものがある以上じゃあこいつ(情報のわからない豆)は何者なんだって普通に思っちゃったんですよ。

それに飲む人にそれは開示するべきだなとも思ってて。たとえばブレンドの割合までいう必要ないですけど、飲む時に「なんかその味わかるな」とかそういうことも楽しみ方のひとつだと思うので。

※8.精製方法:コーヒーチェリーからコーヒー豆を取り出す工程における処理方法のこと。ウォッシュトは水洗いでチェリーの実の部分をを剥がし取る方法、ナチュラルはチェリーの実をつけたまま乾燥してから剥がしとる方法です。

ーなるほど。なんだか澤地さんは業界の「トレンド」を見ているというよりは、どちらかというと実際にお店に来たお客さんを見て合わせているように感じますね。

そうですね。「お客さんのために」と言葉にするとあれですけど、一生懸命休まないのもお客さんのためだし、お店を利用する時にお客さんに不便をかけない、お客さんがおうちでおいしいコーヒーを飲めるということに重きをおいて日々頑張っています。

ーはい。お話を聞いていて、その「お客さんのために」という心情をなんとなく感じます。
ところで阿佐ヶ谷にお店を開かれたのは、この辺にご縁があるからですか?

僕がすぐ近くで生まれ育ったんです。高円寺とか中野とかは遊びに行く距離なんですよね。中でも落ち着いていて街の雰囲気が一番好きだったので阿佐ヶ谷にしました。

ー先ほどから常連さんがとても多いように見えます。

どうしても住宅地なので地元のお客さんがほとんどになりますね。

ーたしかにこの値段※9でこの味のコーヒー屋さんが近くにあったら、他の店には行けないと思います。

だから変なもの出せないんです。「安かろう悪かろう」みたいになるのがすごく嫌なんです。「この値段で驚くなよ」っていう気持ちでやっています。

※9.この値段:この日フレスコさんで販売していて一番安かった珈琲豆は200gで980円の珈琲豆でした。

ー最近スペシャルティコーヒーで高い豆を売る店も増えましたね。プロの私でも「こんなにコーヒーにお金出せない」と感じることが増えました。

昔から「スペシャルティは高く売ろう」みたいなことを聞くのですが、「高く売ろう」じゃなくて「高く買おう」でしょと思います。お客さんに高く売っても、生豆を高く買わなきゃ自分の利幅が増えるだけですよね。だから生産者のことを思うなら生豆を高く買えばいいんです。

それに実際は僕らよりも裕福な生産者もいるんですよ。レストラン5軒持っていてガソリンスタンドもやってて、行けば離れに泊めてくれて、そういう僕らなんかよりも裕福な生産者もいるんです。「コーヒー」って言うとみなひとくくりにされるけど、国によって情勢も違えば国としての力の入れ方や国からの扱いも違うじゃないですか。みんな一様ではないですよ。

ーごもっともだと思います。

そうしたいなら商社さんに「もっと高く買えますよ。だから商社さん高く買ってくださいね」と言うか、もしくはダイレクトトレードでめちゃくちゃ高く買ってくるかしないとですよね。

僕はお客さんに高く売る気は全然なくて、理由もなく高く売れないし、日々飲むものであって欲しいんです。スペシャルティコーヒーがどんどん高嶺の花みたいになっていってしまうのも嫌なんですよね。コーヒーを飲むのにグラムを計って秒数を計るとかどうでもいいじゃんと思って。

たとえば日本茶を家で飲む時にグラムを計らないですよね。日々ルーチンでやっていると「今日は濃く入ったな」とかが自分の感覚でわかるじゃないですか。人間の感覚を大事にしようよと思います。お惣菜屋のおばちゃんに計り売りをお願いすると500gなら500g、ほぼほぼぴったりいくじゃないですか、あの感じ。バリスタってできるんですよ。

ーわたしも結局は人が飲むものなので、数字に踊らされずに感覚を大切に扱った方がよいと思っています。計りはしますけど。

僕らはお金をいただいてるプロなので計りますし味をチェックしますしお客さんに常にアベレージ以上のものを出し続ける義務がある。お客さんには好きなように飲んでもらってかまわないんだけど、ぼくが飲んで欲しいコーヒーは日本茶を入れる感覚のような感じ。「ちょっと豆少ないかな、少し足してみよう」とか言いながら「ああやっぱり濃かったか、最後に少し足したせいで濃かったかな。じゃあ明日はもうちょっと減らそうかな」みたいにやったり、濃いなら少しお湯を差して「ちょうどよくなってよかった」って飲むようなもの。その中で、スペシャルティコーヒーで焙煎が良くできていておいしいコーヒーだったら最高じゃないですか。いちいち神経つかって「これ200g3000円もしたから」とか言いながらじゃなくて。200g1000円しないのにすごくおいしい、みたいな。

とういうので僕はあまり値段をあげられないんですよ。お客さんのことを考えちゃいます。

ーそれをちゃんと見てくれる人がいることが尊いなと思います。値段が高いから美味しいとか希少だから美味しいとかじゃなくて。

そうそう、それは常々思っています。みんな有名だからとか高いからとかでフィルターかかるんですよ。これもよく言うんですけど、みんな自分の舌を信じようよって思います。肩書とかそういうのに惑わされないで。世界的に有名な焙煎屋さんのコーヒーを飲んでも美味しくないと思うことも多いし、自分のコーヒーでもそう思うことはありますよ。これ美味しくない、どうしてこうなったって。だから僕は自分で決めた範囲の中のものだけを商品にしています。それを逸脱したものは売らないし、そのアベレージを常に高いところへ持っていく努力はしています。

ーきっと時間と労力がかかってるとは思うのですが、今フレスコさんに来ているお客さんはみなさん自分の舌や感覚で味わう人なのかなと思います。

そうなんですよね。

ー今後のことをお聞かせください。

今後はあんまり考えてないですけど、そうですねぇ…。

ー毎日が自分との戦いって感じですか?

どうしましょうかね。まだこの焙煎機を1年使っていないので、年間通してどんな風な味わいになっていくかなっていうのも見たいです。正直味がぶれることもあるでしょうし、商品としてお金をいただける範囲の中ぎりぎり許容範囲の部分、というのも出るんだろうなって想像してストレスを抱えながらあと数ヶ月です。でもこの数ヶ月がいちばんいやな月なんですよ。湿度があがって気温があがって。

ー焙煎機が変わると変わりますか?

焙煎機が変わるとやっぱり変わりますね。そこは僕のテクニックではどうにもならない根本が変わっているので。でも、ものはつかいこなしなので(大丈夫)。

お客さんに「ドリッパーはやっぱり円錐がいいんですかね」とか聞かれることがあるんです。僕は必ず「なんでもいいですよ」と言っています。「自分が欲しい味わいを手にするためにはそのドリッパーを使いこなせばちゃんと手に入りますよ」って。

焙煎機もそれと同じだと思っていて、根本的なものは違うんですけど、自分が目指しているものを必ず作れるだろうなと信じてやっています。

ー素晴らしいですね。これからも阿佐ヶ谷のみなさんのコーヒーライフを支えていく店であってください!

今回は貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました。

澤地さんたちはご自身のことを「変わってますよね」と言っていましたが、私にはただとても誠実で思慮深く、お客様想いの方だと感じられました。

澤地さんは取材中に何度か「自分の舌を信じて」という言葉を使っていました。この態度は自分自身を信じていると同時に、目の前にいるお客様を信用している言葉だと感じます。相手がそこまでちゃんと受け取ることができると信じて、目の前の相手を見て商売をしている。

私はコーヒーに関して、「こうするといいですよ」というアドバイスを一方的にすることは簡単だと思っています。澤地さんが「どんなドリッパーがよいか」と聞かれた時に「なんでもいい」と答えられるのは、相手の舌を含めた感覚や態度を信頼しているからこそだと感じます。

取材中も常連さんと見られるお客さんが絶え間なく訪れていました。「当初食えなくて苦労していた」と仰っていましたが、それでもブレない軸があったからこそそれについてきてくれるお客さんがいるのだと感じました。

今後もどのようなコーヒーを作ってくれるのか楽しみにしています。

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