[嘘のたべもの]vol.11 かいそうシーン

Column

昔、若かった頃シェアハウスに一瞬住んでいた。

勝手に「ヒッピーの家」と呼んでいたのだが、ヒッピーな感じやオーガニックな感じの人が多く住んでいて、独自の健康的なものを食べたりだとかおこなったりだとかしていた。

わたしは自炊をしないタイプなのでそれなりに居心地が悪い感じがしたが、そんな空気感を思いきりぶっちぎって居間で堂々とマックを食べているヤツがいた。

テレビ局で音声を録る仕事をしていた彼は、そんなオーガニックでホリスティックな空気の中でめちゃくちゃ堂々とマックを食っていた。

あまりにもすがすがしかったので、正直かなり励まされていた。かなり思想が偏った家だったけれど、全く違うテイストのやつがいたっていいんだな。

あるとき、突然自炊に目覚めた彼は台所で豚キムチを作ったりするようになったのだが、彼のやっていた食べ物の食べ方の中で一番おいしいと思ったのがひじきの煮付けに温玉をのせて食べるというものだった。

ひじきはパサパサしていてあまり好きではなかったが(わたしはパサパサした食べ物があまり好きではない)、温玉をのせて食べるとほどよくとろりとするので苦手なパサつきがかなり改善され、味もおいしくなる。ひじきのことを正直地味なパサつきだと思っている人はぜひ試して欲しい。コメにのせて丼としてもかなりキマる一品になるからサ…。

そんな中、ひじきのことを調べたアメリカ人のルームメイト。アフリカ系の移民二世の(よく聞くと、どうやら政治難民だった)その子は結構料理好きで、アメリカ人の料理はやばいのではという謎のステレオタイプ的偏見を壊してくれるくらい結構ちゃんとしていた。

「ひじきって鉄分の含有量がすごいしめちゃくちゃ栄養があるんだね!今度買うわ」と言っていたのだが、ある日買ってきたものは「わかめだった…」と落胆している姿もセットで思い起こされる。彼女にとってそれは単にseaweedだったんだなあと、海藻類への解像度の低さについて、なんかちょっとじわじわきた。

[嘘のたべもの]

名前:づ
手間をかけずに栄養をとりたいと考えている。
げんきなときと、そうでない時がある。
謎犬愛好家です。