こや

[つまみ読む生活]vol.13 唯一無二のチーズケーキ

Column

「おはよう」のあなたも、「こんばんは」なあなたも、こんにちは。第13話です。

最近、腰が痛いです。思い当たることは、寝すぎ、ということだけです。深夜3時ごろ眠り、昼の12時に起き、15時ごろに昼寝をするというダラけた生活をしています。
それに、24時から眠るまでの3時間、ベッドに入りながらSNSを見たり、本を読んだりしているので、私は、縦より横の状態の方が長いと言えます。
一応、姿勢が悪い自覚があるので、気が付いたらすぐ背筋に力を入れるようにはしているのですが、他人から見るとそれはどうやら「反り腰」になっているらしく、起きている時でも腰を痛めつけていたようです。

「ああ、整体いこう」と思う土曜日の14時です。

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さて、ご近所のAさんはお菓子作りが趣味で、それもとってもお上手です。

小さい頃、お母さんに連れられて、Aさんの元へ回覧板を渡しに行くと、

「作るのは好きだけど、食べきれないのよ〜」と言って、いつも美味しいお菓子を持たせてくれたのでした。

小学校に上がると、学校から帰ってくるなり、キッチンを確認していました。見知らぬタッパーが置いてあると、Aさんのお菓子があるという印でした。

Aさんが作るお菓子は、アップルパイ、スノーボールクッキー、ガトーショコラ、サブレなど多岐に渡りましたが、どれも共通した彼女の味、のような何かを感じることができました。

中でもダントツで好きなものがあります。それはレアチーズケーキ。

甘いクッキー生地の上に、口がとんがるくらい酸っぱいレアチーズがのっかっています。初めて食べたのは、小学3年生の時。
その時はショートケーキが一番好きだったのですが、「フルーツも色もないこの素朴なケーキが、口に入れると色んな味がする…!」とあまりに美味しくて、驚きました。

タッパーを返しに行くとき、「作り方を教えてください」と頼み込んで、一緒に作った思い出があります。
ぼんやりした記憶ですが、冷蔵庫にあるようなヨーグルトとクリームチーズを混ぜていて、「これからアレが!?」と、またも驚きました。料理は魔法だ、と思って

4年生から始まったクラブ活動で、料理クラブに入部したほどです(学校でお菓子が食べたかっただけ)

それから何度か教えてもらった通りの材料、分量でやるのですが、Aさんの味にはならず、いつの間にか諦めて作らなくなってしまいました。私が作らなくてもAさんが作ってくれると思っていました。

そんな私も成長し、大学生になり家に帰らなかったり、社会人になり実家を出たりして、Aさんのお菓子を食べる機会もどんどん減っていきました。

しかし私の中のレアチーズケーキの正解は、Aさんのレアチーズケーキとなってしまっていました。ケーキ屋さんやカフェのレアチーズケーキを食べても、しっくり来ないのです。

また食べたいなあ、と何度思ったことでしょう。

そして先日。実家に帰った時、キッチンに見覚えのないタッパーを発見しました。

「タッパー、新しいの買った?」と聞くと、「Aさんのだよ」と母。「チーズケーキだよ」と母。

聞いてすぐ、お皿に移してコーヒーを淹れて、何年かぶりのそれを食べた時、たまらなく美味しくて、なつかしい味がして、かなり感動しました。そして、「また改めてレシピを聞こう」と思いました。
その通りにできる自信はないけれど、前よりかは近いものにできるはず。

そして私は、食べたいと思った時に食べられなくなってしまう食べ物は、この世にたくさんあるのだということに気付かされたのでした。お母さんの味噌汁や、おばあちゃんのモツ煮、そしてAさんのお菓子。いつでも食べられるし、とか思っちゃだめだ。

そういえばこの前、一番好きだったラーメン屋が店を畳みました。その人にしか作れない味、というものがある。

だから、その時その時、その人の“手作りの味”とちゃんと向き合って美味しくいただくことを大切にしていきたい、と強く思ったのでした。
そして、出来ることなら、教えてもらえるうちに教えてもらおう、と思ったのでした。

と、同時に、その人にしか作れない味がある、ということは私にもあるはずだ。
私の得意料理、オリジナルの料理って何だろう。誰かの記憶に残るものを、私も持っておきたいなー!と思ったのでした。(でも、思わなくても自然とそうなっていくんだろうな)

今回はこの辺で、ごちそうさまでした。

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