こや

[つまみ読む生活]vol.29 場所代?コーヒー代?

Column

「おはよう」のあなたも、「こんばんは」なあなたも、こんにちは。第29話です。

久々に日記を開くと、6/27で時が止まっていました。あら。2ヶ月近く、個人的な日記にすら書くこともないのか、私の生活。この29話についても、1週間くらい何を書こうか考えているのに、本当に書くことがない。でも締め切りを過ぎている、どうしよう。だからといって適当なものを出すわけにもいかない。

何かヒントはないかと部屋を見渡すと、本棚に並ぶのは特になにも起こらない日常が描かれている小説たち。そうそう、私ってSFとかサスペンスより、読み終わったあと「どんな本だった?」と友達に聞かれても答えられないような、1ヶ月経つと忘れてしまうような、でも読んでいる間は心地が良くて何回も読み返してしまう小説が大好きなんだよなー、と気づく。これほど読んできたのに、私は今、何も起こらないことに何かを見い出せずに困っている。情けない話だ。

やっぱすごいことだな、「特になにも起こらないこと」を書いて人の心を動かすのって。だから好きなんだよな。

と感心しながら、その高度な技術について考える。言葉選びが美しいとか行間が絶妙だとかストーリーの構成が奇抜だったりとか、その作家にしか書けない様々な手法が、なんでもない物語を面白いものにするのかもしれない。そして一番は「何をどう見ているか」なのではないのか!?とハッとする。

お、このネタ切れ問題を解決する糸口が見えてきた気がする!

よし、さっそく目の前に広がる風景を、視点を変えて見てみよう!(突然なんか始まったぞ)

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目の前に広がる風景、ここはカフェ。家にいるとモンハンやら昼寝やらしてしまって集中できないのでカフェに来ました。誰も私のことなんか見てないだろうけど、「この人サボってんな」と思われたくないので捗ります。

さて、このカフェで、見る視点を変えてみよう!と全体を見回すと、ここにいる人たち、ほとんどパソコン開いたり勉強をしている。

そもそも「カフェ」って、コーヒー飲むところだよな。

純粋にコーヒー目当てに来た人ってどのくらいの割合いるのだろうか。こだわりの喫茶店と、Wi-Fiもコンセントもあるチェーン店を比べるとそりゃ来る人の目的は変わってくるだろうけど、作業しに来ている人たち、認識として「場所代」としてコーヒーというチケットを買って居座ってるようなものではないのか。

だったら、そのチケットは「コーヒー」じゃなくて「ぬいぐるみ」とかでもいいのでは…?

お店に入って、カウンターでメニューを見ながら悩んでいると、店員さんに「定番は“くま”です。夏季限定の“シロクマ”も涼しい気持ちになるのでおすすめです」などと言われ、「あ、じゃあ、“シロクマ”で」と注文すると、シロクマのぬいぐるみを渡される。席につき、テーブルにぬいぐるみを置いて、パソコンを開く。シロクマに見つめられながら作業をする。

……みたいな。悪くない風景だな。いや、かなりいい風景だな。経営的に見ても腐るものではないからロスにならないし、オペレーションも楽。品質にブレがないのでクレームもなさそう。ストックが場所を取りそうだけど、ディスプレイにすれば問題なさそうだし。

いやこれ「カフェ」じゃないな。「カフェ」ってなんだ。広辞苑を召喚。

①主としてコーヒーその他の飲料を供する店。日本では幕末の横浜に始まり、東京では1888年(明治21)上野で開店した可否カッヒー茶館が最初。珈琲店。喫茶店。

②明治末〜昭和初期頃、女給が接待して主として洋酒類を供した飲食店。カッフェ。カフェー。

なるほど、このぬいぐるみシステムはやっぱり「カフェ」とは呼ばないな。なんて名付けようかな。これで新しい事業でも始めようかな…

うん、はい、そこまで〜!!(終了)

……うわ、目の前に広がる風景を、視点を変えて見たりしていたらいつの間にか1500文字を超えていたし、ビジネスチャンス発見しちゃいました。すごいな。これからも積極的にやっていきたいものですね。

ところで、今改めて思ったのですが、本当に美味しいコーヒーを飲むためだけに手ぶらでカフェ行きたくないですか?逆に。それって、もしかしてとても豊かなことじゃ、ないですか?しばらくそういうことをしていないな。

作業しながらいつの間にか冷めてたコーヒーを出る前に飲み干すんじゃなくて、丁寧な一杯をただ飲むだけに時間を使いたいな。店入ってから出るまで誰とも話さないで目も合わせないで、場所代として支払うのではなくて、顔覚えてもらって、天気の話とかしたいな…。

なるほど3周くらい回って、基本に戻ってきました。これぞ思考の散歩…!

近いうちに、手ぶらでコーヒーを飲みに行こうと思う、土曜日の16時でした。

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「つまみ読む生活」
食べるように読み、吐くように書きます。ここ3年、1年おきに人生がガラッと変わってる。
こや