[つまみ読む生活]vol.11 エプロンメモ
「おはよう」のあなたも、「こんばんは」なあなたも、こんにちは。第11話です。
ぽかぽかの日とすごく寒い日が順番に来ています。お肌はカサカサ、喉はカラカラです。今年は、冬がゆっくり近づいて来ている気がします。(秋がない年ってたまにありますよね?)
街に出ると、女子高生がブランケットを足に巻いて歩いていたり、子供が落ち葉を踏んで喜んでいます。みんなの服の色も、口裏を合わせたように、いつの間にか落ち着いた冬の色味に変わっています。
「人間は寒くなったら重ね着をするし、動物だって、冬の毛に変わって一回り大きくなるのに、木は自ら裸んぼうになっていて寒そうだな〜」と思う木曜日の15時です。
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「何か食べたいけれど、何を食べたらいいのか、さっぱり浮かばない」って時は、頭の中のメニュー表を広げても、しっくりきてないということだと思います。ハマってたものや、常に好きなもののページが徐々に擦り切れていって、見ているページがとうとう白紙になるイメージ。(伝わるかしら)
そんな時は、ご飯にまつわるインプットをします。前回書いたように、映画のワンシーンでたい焼きを見て、たい焼きに翻弄されたり、街に出てキューバ料理のお店に挑戦したり、友達に教えてもらった、期間限定で売っている変な味のカップラーメンを買ってみたりしています。
でもこれは元気な時。
「何を食べたいか分からない時」って、同時に「何も考えたくない時」である事がほとんどです。気力がないのです。テレビを見るのも疲れちゃうし、家から出たくもない。
さらに私はスマホ依存症の自覚がありありで、気を抜くとびっくりするほどずーーーっとスマホを眺めてしまいます。「もう見たいものなんてない!」と思っても、体が勝手に10分に1回、いや5分に1回、真っ黒な画面を明るくさせています。何もせず、スマホを見てゴロゴロしていて1日が終わってしまうことが、わりとあります。
今を生きる私たちの指先は、「検索」という行為に支配されているように思います。
考えるよりも、感じるよりも早く、検索をしている…。
「わからない事に対する答え」は大体出てきますが、何が分からないかを分かっていない時、検索機能は全く役立ちません…!!
「ねえ私って今、何食べたいのかなあ?何したらいいかな?」とSiriに聞いても、答えてはくれないのです。
そんな無気力な生活を繰り返していたある日、お母さんから、お下がりで本を貰いました。
「エプロンメモ」という本です。
こちら「暮らしの手帖」に長年連載されていたコラムをまとめた本です。暮らしにまつわる、アイデアやヒントがたくさん詰まっています。
脳みそが空っぽの時に、家から出ず画面も見ずにインプットするには最適の本、と言っていいでしょう。
ぼんやり眺めていると、釘に油とか、歯ブラシにも太陽とか、ふりかけ3つとか、魅力的なタイトルが目に入ります。
季節ごとにまとめられてはいるものの、衣食住についてのメモがランダムに書いてあって、頭の奥にあるものを引き出してくれたり、全く自分の中になかったものを教えてくれます。
お腹をすかせながらパラパラめくっていると、キムチトーストという単語を見つけました。キムチトースト。なるほど、それは食べたいかもしれない!自分では思いつかない材料の組み合わせを見つけることが出来ました。食パンにキムチをのせて、韓国海苔とチーズも追加してオーブントースターで焼いたら、とっても美味しい。こういうのが嬉しいものです。
続けてページをめくっていくと、冷蔵庫の掃除が目に入ります。「そうだな、最近ぐちゃぐちゃだな、中身の整理してみようかな」と思えてきて、夢中になって冷蔵庫を綺麗にしました。
そしたら、本を見ずともどんどんやりたい事が浮かんできて、生活態度が改善されていきました。
気になったタイトルだけポツポツと拾うように読むから、何度読んでもその時の状況で目に入るものが変わっていきます。
現在「エプロンメモ」は2冊出ていて、1冊目の初版は昭和59年。2冊目は平成16年です。1冊目と2冊目で時代の変化を少し感じますが、それも面白いです。一貫して、ささやかな気遣いの大切さを教えてくれます。
無気力になって、自分が何を食べたいのかも分からなくなってしまった時、ヒントを拾いに行ける場所を手に入れました。
今回はこの辺で、ごちそうさまでした。
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