[つまみ読む生活]vol.23 食べてる時はオフライン
「おはよう」のあなたも、「こんばんは」なあなたも、こんにちは。第23話です。
今の私は、絶賛アニメの沼にはまっています。生活のほとんどを放棄して、ひたすら見ています。シーズン5まであるものも、3日で見終えてしまうほどです。今まで、漫画もアニメもドラマも映画も好き好んで見てきたつもりですが、こんなに没頭するのは初めてです。幸いなことに私のまわりにはプロのオタクがたくさんいて、オススメを聞けば即レスでタイトルが箇条書きされた長文LINEが来るので、一つ見終わっても次見る作品が永遠に現れる仕組みです。この生活も2ヶ月が経とうとしている最近、気付いたことがあります。
それは、「自分のことで悩まなくなった」ということです。
これまで、考えないようにしていても嫌なことを思い出してウワーッ!となったり、将来のことを考えて不安になったり自分の性格とか体型とか、それすらも超えて、愛の正体や生きるとは何か、宇宙のことまで考えて不眠症になっていた私が、初めて頭の中からエゴを抜くことに成功したのです!!
人はこれを「現実逃避」と呼ぶのでしょうか。その通りです。これは現実逃避。でも、よく考えたら私はこれまでの人生、現実逃避をしたことがありませんでした。がっつり真っ正面から、現実に向き合って大怪我をして生きてきました。宿題もLINEの返事もその日のうちにやってきました。齢24にして、多くの人々が10代のうちに通ったであろう道を進んでいる、月曜日の16時です。
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前置きが長くなってしまいましたが、昨晩オンライン飲み会をしました。お酒は好きな方でよく飲みに行っていましたが、コロナの襲撃にあってからというもの、引きこもるようになり家でも飲まなくなりました。たまに飲んだとしてもランチにつけた一杯のワインくらいで、酔っ払うということを1年以上してなかったのでした。
さあ飲もう!と意気込んで度数高めのレモンサワーロング缶を勢いよく体に入れて、大学時代の友達3人とお話しました。
今の私はアニメについてしか話せることがないけどその話題だけで結構盛り上がって、
そうか、人と話すとき、自分のことを話さなくても会話って成り立つのか
と驚くことからスタート。人と話す内容ってだいたい仕事とか恋愛とか、自分とその周りの現実世界の話だったから。
そして、「新しい人間関係も大きな日常の変化も発生しない今の状況で、心が動くことがなくなっちゃったかも〜」と、ふと口からこぼれた自分の言葉にハッとした。
ああそっか、私は一旦この世界から離れて、違う世界で心を動かすことにしているのか!私は心を動かしたかったのか!
と黒霧島ソーダを流し込みながら納得。気づくことが多い飲み会である。
「アニメって、自分の体験じゃないのに感動して泣いちゃったり一緒に悔しくなったり、キャラクターを友達みたいに思って応援しちゃうよね〜」と話をしている友達も、直前まで見ていたアニメと同じパソコンに映っている。それが不思議に思えてくる。
と同時に、それは私もだな、オフラインの自分はどこ? 私が今ここでちゃんと生きてるのを彼らはどうやって確かめるんだ?って思って、少し怖い夢を見ているような感覚になった。
オンライン飲み会が終わって、パソコンを閉じてキッチンで水を飲むと、自分の体の中に一本の道があって、そこを冷たい水が落ちていくのを感じる。火照った顔に手を当てて、また気がつくのです。酔っぱらった私が、しっかりとここにいる!ということに。現実の酒を飲み、現実の私の体にアルコールが作用している!と。当たり前のことなのに、それが尊いことのように思えたのでした。これに気づかなかったら、私は危うくオンラインの世界に取り込まれてオンライン上にしか存在しないキャラクターになっていたかもしれない。
常にオンラインの中にいても、1日3回はしっかり戻ってこよう。朝ごはん、昼ごはん、夜ごはん。食べてる時はオフラインだから。
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