こや

[つまみ読む生活]vol.27 一緒にご飯を食べること

Column

「おはよう」のあなたも、「こんばんは」なあなたも、こんにちは。第27話です。


不眠症も治ってきて、夜に眠くなるのが嬉しいです。でも今朝、嫌な夢をみました。嫌な夢でズタズタに傷ついてしまったり疲れがすごかったりしても、いつも通りの1日をはじめなきゃいけなくて、なんだか損した気分になっている日曜日の11時です。

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突然ですが、実は私、バツイチです。「バツイチです」ってどのタイミングで言えばいいのか分からないですよね。隠してるわけでもないし、だからと言って積極的に言うものでもないし。じゃあなんでこのタイミングなのか。それは今朝見た夢に、元夫が嫌な感じで出てきたから。(勝手な夢だな)

大学を卒業した後にすぐ結婚して、1年と少しした後に離婚しました。“23歳でバツイチ”という自分でも信じられないことが起き、そしてさらに1年が経ちました。今では、結婚も離婚も自分の選択でこんなに誇れることはない!ってくらい良い決断だったなと思っています。


元夫は、なんかほんと私と正反対の人間でした。「違う星の人」という表現が一番しっくりくる。私の顔が“丸”で形成されているとしたら彼は“線”で、私は文系で、彼は理系で、私はインドアで、彼はアウトドアで、私はネガティブで彼はポジティブ。私はおしゃべりで、彼は無口で、私はガサツで、彼は几帳面。そんな感じです。正反対だから「なんだこいつ!?」という気持ちで猛烈に惹かれ、正反対だから“普通の生活をすること”が本当に難しくて、私はどんどん壊れてしまいました。なので離れました。他にも理由はあるけれど。

世の中には、いろんな相性のペアが存在するけれど、それら全てにおける最高の関係が夫婦とは限らないらしいです。結婚はゴールではないらしいです。22歳の私が、それを知るわけがありませんでした。

もちろん、共通点だってありました。音楽とか食の好みが同じでした。だからご飯を一緒に食べることは、私にとって特別な行為でした。

結婚生活最後の朝、いつものように一緒にご飯を食べ、彼が仕事に行くのを見送ってから、荷物をまとめて家を出ました。最後の言葉は「いってらっしゃい、さようなら」でした。

その時、私思ったんです。「ああ、もう違う体になる」って。今までにない不思議な感覚。気持ち悪いかもしれないけど……毎日同じものを食べて過ごせば、体の中がおそろいになるんです。結婚してからついたお腹の肉とか、悔しさとか悲しさで出てくる涙は、一緒に食べたものから出来上がっていたんだなと急に思ったのです。

離れてからしばらくして、毎日違うものを食べ、柔軟剤とかシャンプーの匂いも変わった時、とうとう完全に切り離された感じがしました。血もつながっていない正反対の私たちが家族になり、日々の積み重ねでやっと同じにした体の中身。それは、体の循環を経て簡単に排除されていきました。

そういう気づきがあってから、一緒にご飯を食べることに対する考え方が変わりました。感染症が猛威を振るうこの状況になって、電話とかSNSでコミュニケーションは取れるけど、一緒にご飯が食べられなくなった。同じものを食べて体の中をおそろいにすることで、誰かと近くなっていたのだなと改めて実感しています。私たちはそんな大切な行為を失ってしまったから、こんなにも寂しくて虚しいのかもしれない。

早く、いろんな人と一緒にご飯が食べたい。

「落ち着いたらね」が、永遠の別れの言葉になって欲しくない。とりあえず私が今できることは、誰かに自分の考えを伝えることで、”頭の中”のどこかをおそろいにさせることなのかもしれない。だから、たくさんのことに気づいて、それを言葉にすることを続けたいと強く思うのです。

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「つまみ読む生活」
食べるように読み、吐くように書きます。ここ3年、1年おきに人生がガラッと変わってる。
こや