こや

[つまみ読む生活]vol.6 手土産パイナップル

Column

「おはよう」のあなたも、「こんばんは」な、あなたもこんにちは。第6話です。

さて、エアコンによって無生物のように冷やされるか、太陽によって食べ物のように焼かれるかという極端な選択を迫られるこの夏、皆さんはいかがお過ごしですか。

私は基本的に、家か近所のジョナサンにいます。日差しと密と蝉の音を排除した室内で、ゴロゴロしたり、作業をしたり、読書をしたりしながら、常に「寒いなー」と思っています。

《 ドリンクバーで何時間も居座る(私のような)人間を追い出したい 》

という強い意思で低い温度設定をする、ジョナサン。そこから出た瞬間に私を包み込む外気のぬるさは最高です。キンキンに冷えた体を温め、湯船に浸かったような感覚にさせてくれます。真夏のドリンクバーでホットジンジャーティーばかり飲む木曜日の15時です。

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最近、人の家や会社に顔を出す機会がたまたま3回ありました。堅苦しくない、遊びに行くような感じの訪問です。「何か手土産を持っていかねば」と思い、駅ビルを散策して

ワイン、クッキー、お煎餅、ジャム、色々と見て回りました。なかなかしっくりくるものがなく、正解を見失い、足も疲れたのでベンチで一休みしました。「お茶目な手土産がいいんだけどな〜」と考えていたら、目の前に果物屋さんがありました。

 「果物を手土産に持ってったら素敵かも〜。フルーツバスケットとか、あげる以前に持ち歩きたいわ〜。」などと思いながら中に入ると、そこにはツヤツヤと輝き、カラフルで、形がぴったり揃った果物たちが並んでいました。うっとりしたけど、人に配れるほどの量感と価格帯が、私の懐とマッチングせずで、まだここに入るのには早かったかしら…としょぼくれて店を出ようとした時に、私の目に飛び込んできたのがパワフルなパイナップルでした。

 少し近づいただけで甘く懐かしい匂いがして、ずっしりと頼もしくて、インパクトも良い…。自分じゃなかなか丸ごとを買わないし、切る時は少しエンターテイメントな感じがするし…。これだ!!と思い購入しました。紙袋から元気よく葉っぱを飛び出させるパイナップルを抱きかかえて歩くのは、花束を持って歩くのと同じような高揚感がありました。

 1回目のお友達は、驚きながらも笑って受け取ってくれました。食べ時より少し早くに渡したので、食べてくれたかは不明…。しかし部屋に置かれたパイナップルを見るたびに、少し困った顔をしている彼女を想像するだけで私はニンマリとしてしまうのです。

調子に乗った私は、以降全ての訪問にパイナップルを持って行きました。

 2回目は「スナックパイン」といって、なんと一口サイズにちぎって食べられるという面白い品種を選びました。一緒にちぎって食べました。美味しかったけど、表面のチクチクがしょっちゅう指に刺さり、不器用な私には難易度が高い代物でした。

 3回目の訪問は海の近くに住んでいる友達でした。なので海で集合しました。「これどうぞ」と言ってパイナップルを出した時、海と空とパイナップルがあまりにも綺麗な画になったので、それだけで、持ってきてよかった〜と思えました。切り方を思い出す時、「おもひでぽろぽろ」のワンシーンが頭に浮かんで、やはりニンマリしたのでした。

こうやって思い返すと、相手が喜ぶかどうかの優先度が低めで、半分イタヅラな気持ちで手土産を選んでいるので、私って自分勝手だな…と少し反省しています。一緒にパイナップルを楽しんでくれるお友達、ラブです。

街中で、パイナップルを抱えている女がいたら、きっとそれはまだまだ「手土産パイナップル」の可能性を見出している私でしょう。どうか遠くからニンマリと見守っていてください。

そんな私の最近のおやつは、「カットパイン」です。切らなくてよくて楽だし、しっかりと熟れていて美味しいね。

ではでは、今回はこの辺で。ごちそうさまでした。

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