[路端のブランチ]vol.17 日替ランチ・イマジネーション!
近所にある喫茶店の日替わりランチ。
黒板に豪快な字でババッと書いてあるんだけど、多分その日の朝、マスターが気分で決めているんじゃなかろうか。
そんな調子だから、メニュー名以外には、写真すらない。この日は「ドライカレーセット 650円」。
コーヒーもついて、都心にしてはかなり良心的な価格。他にもミックスサンドとかピザトーストとかハニートーストとか……色々あるけど(全部パン)、ほぼ迷わず日替わりランチにした。
待つこと数分、テーブルについた皿を見て気づく。ああ、これじゃない!
ドライカレーってこっちか!ピラフのタイプか。小麦粉で仕上げたねっとり系の喫茶店風キーマカ レーを期待していたのに……。
喫茶店のランチメニューってよく考えるとメニュー名が当てにならないんだ。
「焼肉プレートランチ」で謎の加工肉が登場したときはさすがに間違えたかと思ったが、曖昧なメニュー名が多い。人によって想像する食べ物が全然違いそうなやつ。
ドライカレーはまさにそんな小さな事件を引き起こし続けてきた厄介な存在だ。
カレーピラフか、キーマカレーみたいなやつか。少し前にもTwitterで論争していたみたいだけど、私は後者派。
さて、文句を並べても仕方がないし、目の前にあるドライカレーを頬張る。ウスターソース由来か、絶妙な酸味がアクセントになりつつも、基本に忠実、オーセンティックな味わい。
これはこれでうまい。ただ、明確に「期待していたドライカレー」ではない。
この期待を抱かせながら、何がくるか絶妙なレベルでわからないファジーなメニュー表記は、もはや一つのアトラクションなんじゃないか、とすら思えてくる。
ドライカレー事件から数週間、ふと前を通りがかると、その日もやはり、入口に殴り書きの日替わりメニュー。
「メキシカンハンバーグ定食」
ごめん。これはさすがにお手上げ!ただ、なぜかそそられる。響きからして旨そうだ。
さて、マスターの頭の中にある「メキシカンなハンバーグ」は、果たしてどんな食べ物なんだろう……真相は、未だ闇の中だ。
日曜日、時計を外す。
そろそろ昼飯を食っておこうとか、もう帰ろう、とか考えることすら億劫だ。あまりに遅刻癖が治らないから、仕方なく間に合わせのチープカシオを平日だけつけるけれど、基本的には時計を見られない。類は友を呼ぶというが、周りもそんな輩が不思議に多い。
そういう奴らと遊んだり、野暮用を済ませたりすると、自ずと昼飯はグダラグダリとしてしまう。開店前に並ばなきゃいけない飯屋に休みの日を使ってわざわざ行くなんて、僕らの頭には浮かばない。
時間を気にせず、その時いた場所でサクッと食うメシが一番だ。 ivy