こや

[つまみ読む生活]vol.9 ポトフの日

Column

「おはよう」のあなたも、「こんばんは」な、あなたもこんにちは。第9話です。

やっとこさ来た秋は、早くも真ん中を少し過ぎたようです。朝晩はとても冷えるようになりました。なので昨日は毛布を出したり、衣替えをしました。….深夜2時に。

「あ〜寒いなあ。眠れない。そうだ毛布を追加しよう、う〜ん、朝起きたら、カーディガン羽織りたいな、あれ、モコモコの靴下どこだっけ….」てな感じで、いつの間にか衣替えを始めてしまったのです。お目当の、あったかい毛布に包まれながらぐっすり眠りまして、朝起きたら天気が良かったので、昨日引っ張り出したセーターや、シワのついたスカートを洗って干しました。そんな土曜日の11時です。

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先日、ある資格試験を受けました。ここ1ヶ月はそのことで頭がいっぱいで、人と会ったり、1日中何もしないという事ができませんでした。やーっと終わって、ホッと一息。

「今日は何もしないぞ〜!!」と強い意志を持っていたのですが、深夜の衣替え、朝のお洗濯、そしてここで文章を書いているあたり、いろんな事しちゃってますね…。私は常に何かをしていたい性分なのかもしれません。

そして、もう一仕事しました。ポトフを作りました。寝ぼけ眼で。半分寝ていても作れるのが、ポトフのいいところです。何もしない日には、だいだいポトフを作っています。

何もしない日=ポトフの日

と言っても過言ではありません。

冷蔵庫の中にある材料をたくさん抱えて、キッチン台にドカンと置く。キャベツ、人参、玉ねぎ、ブロッコリー、じゃがいも、ウインナー。とにかく無心でざっくり切って、ミニトマトはそのまま。まとめて鍋にボンッ。柔らかくなる順番とか、どうでもいいです。トクトクと、お水をたくさん入れて、ブイヨン2つと塩コショウ。中火にかけて、放置。水温が上がって、グツグツ、溶けたり欠けたりしながら揺れる具材を眺めながら、コーヒーを淹れて飲む。サイコ〜。面倒ごとは後に回したくないので、洗い物はここで全て終わらせます。多めに淹れたコーヒーは、あったかいうちにタンブラーに移します。

あれこれしているうちに、ポトフが〈第一の完成〉を迎えました。これが朝ごはんです。

キャベツはまだシャキッとしていて、味はサッパリめ。ウインナーは、まだ食べません。

そうして、準備を整えた最高の状態で、「何もしない」を始めます。溜まった録画をひたすら消費します。何も考えず、ドラマや映画を観ます。目が疲れたら、廊下で眠る犬を眺め、そのうちウトウト、、昼寝をします。

15時ごろ、昼寝から目覚めます。フローリングで痛めつけられた体をバキポキ言わせながら、先ほどのコーヒーを飲みながら屋上に行き、目覚ましにタバコを1本吸います。

深呼吸しながら、街を見下ろすこの時間は、世界を救うほど平和だと思えます。

どんなにお腹いっぱいで昼寝しても、起きたらお腹が空くのはなぜでしょう。寝癖をつけたまま、またキッチンに行き、まだまだ大量に残っているポトフを温めます。

アツすぎるくらい温めるのがいい。家用カーディガンの、伸びすぎた袖は、アツすぎるポトフが入ったスープカップを持つ手を守るためにあるのでは…!?

そうしてポトフは〈第二の完成〉を迎えます。冷めている間に染み込んだウィンナーのコク、シナシナになったキャベツ。味も食感も変わります。そして第二のポトフを食べながら、漫画を読んだり、夕方のニュースを見たりします。食べ終わったら、2時間くらい、お風呂で過ごします。セルライトを退治するマッサージをしたり、かかとの角質とお別れしたり、腰回りや背中のお肉の増減を調査したりします。

お風呂から出ると、すっかり窓の外は暗くなっていて、1日が終わろうとし始めます。

仕事に行ったり、出かけていた家族が帰ってくる19時。夜ご飯の時間です。

そしてまた、ポトフを温めます。家族に「ポトフあるよ」と言うと「ありがとう〜」と言われる。ぐうたら過ごしていた事が、帳消しになるどころか、褒められます。

この「ありがとう」という言葉が最後の調味料となり、ポトフは〈第三の完成〉を迎え、そして鍋は空っぽになりました。

心も体もポカポカにしてくれてありがとう、ポトフ。今日一日、君と過ごせて良かった。

私はもう眠るだけです。ごちそうさまでした。

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